834 : 1/2[sage] 投稿日:2007/01/21(日) 18:12:25 ID:mpEcF6qh0 [3/6回(PC)]
これは登山中に仲良くなったオジサンに聞いた話 
そのオジサンは、父に「煙草を一本くれないか」と 
話しかけて来た事で仲良くなり、一緒に頂上を目指す事になった 
オジサンに「山で怖かったことってある?」と聞くと 
「色々あるよ」と教えてくれたのだが、その中のひとつ 

それはオジサンが単独で結構高い山に登った時の話 
その日は天気が悪く、オジサンはテントの中から出る事が出来なかった 
テントの中でコンロでお茶を沸かし、煙草をふかしていると 
テントの外から「すみません」と声がした 
オジサンは「道に迷ったか?」と思い、「どうしました」と入り口を開けた 
そこには若い男が1人立っていて、やははり道に迷ったのだと言う 
そこでオジサンは男をテントに招き入れた 

「大変だったね」とかなんとか話しながらお茶を勧めた 
男はお茶を受け取り、「申し訳ないのですが煙草を頂けますか」と言った 
オジサンは快く煙草を渡すと、火を点けてやった 
すると男は「ああ美味しい。久しぶりの煙草です」と言った


835 : 2/2[sage] 投稿日:2007/01/21(日) 18:13:25 ID:mpEcF6qh0 [4/6回(PC)]
男は煙草を吸い終えると「ありがとうございました。これで満足です」と言う 
オジサンは不思議に思いつつ、「ラーメンでも食べるか?」と聞いた 
男は笑って「それは結構です。僕はそろそろ行きます」と言う 

外はさっきよりも雨脚が強くなっていたので、オジサンは引き止めた 
が、男は微笑んだまま、ザックを掴むとお礼を言って外へ出て行った 
オジサンは男を追おうとしたが、靴を履くのに手間取った 
外に出てみると、男の姿は既になかった 

不思議な事に気がついた 
男が座っていた場所は少しも濡れていなかった 
男がタオルで拭いた所は見なかった 
それ以前に、入って来たときから男は濡れていなかった様な・・・ 
それに、靴は?履いたままじゃ無い限り、出て行く時に 
少し手間取る筈じゃないのか? 

オジサンは色々考えたが、結局は「あの男はこの山で遭難したんだろうな」 
と思ったそうだ。煙草をあげた事で、成仏したのかな、とも 

次の日はとてもいい天気だったそうだ 
オジサンは男が残した煙草の吸い殻を 
慰霊碑まで持って行き、その場に埋めてやったそうだ 
勿論、一本の煙草を供える事も忘れなかったとの事 

「不思議だろ?」と笑ったオジサンを見て 
この人も遭難した人だったらどうしよう、と思ったのは内緒