784 :1/4[sage]投稿日:2005/09/10(土) 20:20:43 ID:MHJErrHb0[1/4回(PC)]
8月末、夏休みを利用してとある神社に観光に行きました。 
そこはとにかく大きな神社でして、史跡や小さな社が境内に点在していました。 
私達はそれを眺めて回っていたのですが、先に一通り見物し終わって 
暇になってしまった私が、ふと視線を投げると、生い茂った木々の中に 
なにやら細い道が伸びているのを見つけました。 
振り返ると、連れ達はずっと後ろのほうで看板の案内を見ている様子。 
私は暇に飽かせてその道に入って見ようと思い立ちました。 

そこは観光順路外だったのか、非常に道が悪く、脇を流れる細い川のせいで 
湿った土の、しかも左右どころか上下にも蛇行していて、先ほどまでいた 
白砂の敷き詰めてある道とは、全くかけ離れた荒れようでした。 
しばらく行くと、よく古風な家の玄関にあるような格子の門があり、その先に 
鳥居と石段が伸びているところに出ました。 
石段の下に立って上を見上げると、社務所のような建物があり、向かいに 
赤い屋根の建物が僅かに覗いていました。



785 :2/4[sage]投稿日:2005/09/10(土) 20:22:20 ID:MHJErrHb0[2/4回(PC)]
石段はそれほど長くは無く、緩やかに頂上まで続いていました。 
段を上る途中、下の方にある民家から、ピアノの音が、途切れ途切れに 
聞こえてきました。 
どうやらこの石段は、山の上の方にあるらしく、民家は木々に隠れて 
かなり下の方に見下ろせました。 
赤い建物は、どうやら奥宮のようです。当然ですが誰もいませんでした。 
社務所に見えたのは…どちらかというと休憩所のような感じで、通路側の 
壁が無く、畳張りの部屋でした。 
社は3つあって、赤い外観からの想像通り、稲荷を祀っているようでした。 
私は賽銭をいれようかどうか迷ったのですが、既に使われていないのでは 
ないかと推測して、結局入れずに、そのまま御神体を眺めていました。 

その時です、視界の端に、何か白いものと黒いものが移りました。



786 :3/4[sage]投稿日:2005/09/10(土) 20:23:23 ID:MHJErrHb0[3/4回(PC)]
振り向く一瞬、それは髪の長い、白い着物の女の人に見えました。 
肌は真っ白で、化粧っ気がないどころか、唇にさえも色があるかどうか 
あやしい状態でした。 
見えたのは、今登ってきた階段の所、その人物を視界の正面に移す前、 
一度瞬きをしてから目を開きました。 

しかし、当然というべきかどうか、そこには誰もいませんでした。 
そのまま階段の上がり口を見つめていると、私がここに入っていったのを 
見ていたのか、連れが石段を登って来ました。 
連れが辿り着くまでの間、私は眼下の景色を見ようと、視線を山と反対の 
先ほど民家があったところに向けました。 

不意の恐怖とは怖いものですね。 
恐怖が一度去った後というのは特にです。



787 :4/4[sage]投稿日:2005/09/10(土) 20:24:27 ID:MHJErrHb0[4/4回(PC)]
絶叫…はせずに済みました。息を呑んだおかげでした。 
足元にある民家は、随分敷地内が荒れている様子でした。 
物置と、離れらしきもの。2つとも屋根がありませんでした。 
物置の隣にはトイレと思われる縦に細長い箱のような建物。 
それ以外は何もありませんでした。 
よくみると周りの民家も全て、既に空き家と化したものばかり。 
私の耳には、絶えず、すぐ下のの民家から聞こえるピアノの音が。 
適当な音を一泊置きに弾きつつ、笑う少女のような声が。 

私は猛然と石段を駆け下りました。 


ところでこの後、結局本堂の方をじっくり観光して帰ったのは内緒の話。