107 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[sage] 投稿日:04/04/02 11:04
二、三年前の事。 

正月明けだった。 
その日たまたま買ってきたブロッコリーに芋虫がついていた。 
普段ならつまんで外に放り出すのだが、なんかそれが出来なかった。 
ガラスのボウルにキャベツをひいてブロッコリーを真ん中に置き、芋虫をいれてやった。 
運良く潰れなかった事からその芋虫を「ラッキー」と名付けた。 

一月九日。 
ガラスのボウルに器用に糸を張ってサナギになっていた。 

二月九日。漏れの誕生日 
ボウルに張り付いて乾いて死んだ蝶が中にいた。泣いた。もう少し早く発見できれば生きていただろうに。 
「ごめんなラッキー。ごめんな。」 
その声応じるかのように中の蝶が少しだけピクピクと動いた。 
あわてて霧吹きで水をやり、ポインセチアの上に乗せてやった。辛うじて生きていた。 
ポインセチアには砂糖水をのせた。 
彼はボウルに張り付いていたせいで飛べる羽では無くなっていた。 
だが、もう少し発見が遅ければ死んでいただろう。 
「ラッキー。おまえはやっぱりラッキーなんだな。」 
漏れにとって一番の誕生日プレゼントだ。とても可愛いモンシロチョウ。


108 : 107続き[sage] 投稿日:04/04/02 11:13
それからの毎日が幸せだった。 
ラッキーはとても賢い蝶で、つまようじを差し出すとそれにつかまった。 
その間にポインセチアを新しいのに取り替える。 
恐らく彼は飛ぶことが出来ない事が分かっているのだろう。 
そして漏れが危害を加えることはないと。 

三月八日。 
いつもいるはずのラッキーがいない。 
あわてて探す。ちなみに玄関先。 
長靴の中にいた。辛うじて生きていた。 
だがここから出すためにはどうすればよいか。 
菜箸を長靴の中に入れると、それにつかまった。 
救出成功。 
やっぱりお前は賢い蝶だ。 

その夜、漏れが一階のトイレに降りていくと、玄関先から光のすじらしき物が見えた。 
何かの見間違えだろうと思い、気にせずに寝た。



109 : 108続き[sage] 投稿日:04/04/02 11:22
三月九日。 
ラッキーがポインセチアの上で眠るように死んでいた。 
漏れは泣きながら庭の隅に、ポインセチアと一緒に埋めてやった。 

四月九日。 
ここらへんでは見かけないモンシロ一匹にたまたま遭遇。 
「おまえは…ラッキーなのか?」 

そういえば、と三月八日の事を思い出す。 
あの光のすじ。 
「あの光は天からのつまようじか… 
あいつの魂はその光のすじに乗って天国にいったんだな…」 

そんな事を思っていると、そのモンシロが漏れのほうに近づいてきた。 
「天から最後のお別れに来たんだな。」 

しばらくすると、漏れからそのモンシロが離れていった。 
そして見えなくなった。 


     …今度こそ本当にさようなら…