35 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[sage] 投稿日:04/03/10 19:29
俺が小学生の時、ばあちゃんが亡くなった。 
ばあちゃんはじいちゃんと住んでいて、あんまり会いに行く事かできなかった。 
ばあちゃんの危篤の報が入った時、小学校で帰りの会をやってる最中で、血の気が引くってのを初めて体験した。 
その時、おふくろはばあちゃんの所に行ってて、親父の車に乗っけてもらって、一緒にばあちゃんが住んでる所まで飛んでいった。 
と行っても、俺が住んでる所から、ばあちゃんが住んでいる所までは、相当の時間がかかる。 
いつの間にか夜になってて、俺は後部座席で横になっていた。 

うつらうつらしている耳元で、とても懐かしい歌声が聞こえる。 
懐かしい、すごく懐かしい歌声だった。 
俺はばあちゃんにとっては初めての男孫で、産まれた時、泣きながら喜んでくれたって話しを聞いた事がある。 
当時は、そんなに道路事情もよくないし、ばあちゃんは体が弱かったのに、俺の事を見たいって、じいちゃんと連れだって、たまに足を運んでくれた。 
その時、俺はよくばあちゃんに抱っこされて、子守歌を聞いていた。 
ばあちゃんの子守歌、ばあちゃんの膝のぬくもり。 
頭を撫でてくれる、あの優しくて、しわしわの手の感触。 
「ありがとね……ばいばい」 
はっきりと、ばあちゃんの声が聞こえて、びっくりして目を覚ました。 
ばあちゃんの声が聞こえた事を親父に言うと、親父は真っ青になって、少し行った所にあった電話ボックスに駆け込んだ。 
ばあちゃんは亡くなっていた。 
最期の最期まで、俺の到着を楽しみにしてくれていたと聞いた。 

間に合わなくてごめん。 
だけど、確かに、ばあちゃんの声、聞こえたよ。 
通夜が終わり、火葬も終わって、お骨を前に手を合わせていると、気のせいかもしれないけど、ばあちゃんの遺影が微笑んだように見えた。 
いつか、俺がちゃんと天寿を全うした時、ばあちゃんに「ありがとう」を伝えに行きたい。